漢方治療エビデンスレポート
日本東洋医学会EBM委員会エビデンスレポート/診療ガイドライン タスクフォース
11.
消化管、肝胆膵の疾患
文献
池本哲也. 消化器外科領域における漢方の役割 腸管ストレスに対する大建中湯の効果
-バクテリアルトランスロケーションからマイクロビオームへ-. Progress in Medicine
2011; 31: 466-7. MOL, MOL-Lib 1. 目的
消化器外科領域における大建中湯の役割の抗炎症効果からの検証
2. 研究デザイン
ランダム化比較試験 (RCT)
3. セッティング
徳島大学病院消化器・移植外科 1施設
4. 参加者
比較的侵襲の少なかった腹腔鏡下大腸切除例と侵襲の大きい肝臓切除例の合計31名
5. 介入
Arm 1: ツムラ大建中湯エキス顆粒 (2.5 g) 、1日に3回、食前内服を術後1日目より7
日間投与群 (DKT群) 15名
Arm 2: 非投与 16名
6. 主なアウトカム評価項目
術後1日目からの体温、排ガスまでの日数、血中CRP濃度比較
7. 主な結果
術後3日目で体温はDKT群36.2℃に対し非投与群では36.9℃であった。排ガスまでの
日数はDKT群 (1.7±0.4日) は非投与群 (2.9±0.8日) に対し有意 (P<0.05) に短縮した。術
後3日目の血中CRP濃度はDKT群 (5.1±2.3 mg/dl) は非投与群 (7.7±4.7 mg/dl) に対し有
意 (P<0.05) に低値であった。
8. 結論
大建中湯の術後体温上昇抑制効果、排ガスまでの日数短縮効果、抗炎症効果が明らか
である。
9. 漢方的考察
なし
10. 論文中の安全性評価
記載なし
11. Abstractorのコメント
本研究は、大建中湯の臨床効果に関し、抗炎症効果の観点から検討を行ったものであ
り、一定の評価がなされる。従来から知られていた腸管手術後の臨床経過のトラブル
の抑制効果の機序の解明につながり、価値ある成績である。絶食ラットでの実験成績
も紹介され、大建中湯の経口投与で腸管内の微生物の集団的ゲノムであるマイクロビ
オームの多様性が崩れずに維持されることから、大建中湯の抗炎症効果の発現にマイ
クロビオームの関連性を示唆した。ただし、この結果は一定の環境下におかれた実験
動物の成績であり、ヒトでの作用機序に短絡的に応用するには今後のさらなる研究が
必要であろう。
大建中湯の作用機序の解明を腸管内細菌の多様性から検討する方向性には高い評価が
与えられる。今後の研究において、実際の臨床例に即したプロトコールで十分な症例
数での検討を期待する。
12. Abstractor and date
後山尚久 2013.12.31